Escape from Tsuki No Uragawa ZOO

制作の裏話

今回はこちらのミュージックビデオ制作についての話。


久しぶりに映像らしい映像を作ったので、うまくいってるかは自信ないですけど頑張ってつくりました。
この映像の話は以前から交流のあった大山美鈴さんからのお誘いでした。
共同制作は美鈴さんの連載の「コラボアトリエ」以来です

たしか、連絡が来たのは7月中頃で、それからちょっとして7月後半に一回目の映像の打ち合わせ。
この時に涼平さんからレコーディング前の仮の曲と歌詞の世界観を表現した3枚程のプロットをいただいて
全編アニメーションのショートフィルムっぽいモノをつくりたいと言われました

正直、それまでに公開しているモノが実写のMVでしたので随分と思い切ったことを!と仰天しました。

ただ、今になってみると納得。
ちなみに、プロットとは言っても、そこには既に現在のモノクロの世界観で!とか
いくつかのパートだけ色を付け、そこはサイケデリックなくらいカラフルにするように、
などなどビジュアルイメージに関する点にもこだわりが込められておりました。

そして、そのプロットを元にそこで一旦絵コンテは美鈴さんが担当ということに決まり、
美鈴さんが全体の骨組みを作ることに。
ところが、尺に大して内容が少ない為かなり中弛みしておりました。
誤解なきよう言うと実はこれは美鈴さんのせいでもなんでもなくて、僕のせい。
歌詞の上では中盤で早くも核になる部分が終わっていて、それ以降は間奏やブリッジになっているためです。
その為、ストーリー性のあるミュージックビデオって、実は歌詞とストーリー展開のペースが違うのですが、
僕も涼平さんも美鈴さんもその事をさほど重要視しておりませんでしたので
実際絵コンテを映像にしてみるまでピンときてなかったのです。

そこで、コンテを書き直す必要性があると、歌詞に無かった独自のストーリーや設定を決めるため
僕と美鈴さんとで打ち合わせをすることにしました。
この際にまず僕がこの楽曲をどう解釈したかを話しました。
そのストーリーの解釈は後述しますが、この打ち合わせで
走り車を歯車にして「モダンタイムス」みたいにしたいとか
地球にきて二人暮らししてる絵を入れようとか、
結構具体的なモチーフについて話したような気がします。
 

そこからようやく実際の制作に入ったのですが、まず難しかったのが美鈴さんの絵。
「アトムの髪型」
のように止まった絵でしか表現出来ないポーズが多く、
それが魅力ではあるもののアニメーションとしてはそこをどう乗り越えるかが最初にして最大の難所でした。
例えば、
美鈴さん絵の特徴の股や脇の部分の丸みや関節のかんじ↓

通常イラストレーターの方が描いた絵を動かすのはパペットツールを使うのですが、これだと躍動感がなく、
関節をつける場所を見つけて無理やり動かす方法があるんですけど、これだと関節が硬くなるのです、、、。

というか、その手法で作ったものがホントに酷かったのです。
既にいただいた画像が元々膝が曲がっていたり、どっちの方向を向いて走っているのか全く読めないのです、、、、
どうしようかなーと悩んでいましたが、この初期段階の頃は映像全体を見渡すためのオフラインを作るということも最優先でしたので
結局9月くらいまではほとんどこんな状態でした↓

このころのオフラインは美鈴さんに貰った絵を動かした上のような暫定的なモノと、
足りない絵は手持ちの動画だったり絵だったりを繋いで、さらに足りない部分は自分で描いて
なんとか最初にオフラインを作りました。
たしか花火のカットを入れるとかのアイディアはこの頃の初期オフラインからきてます。


ただ、ここらへんの失敗で僕なりにちょっと色々と見えてきました。
一応、前に美鈴さんとコラボした映像はカラーで密度の高い絵を映像的にとにかく下手でもいいから動かしたり弄りまくるという感じでしたけど、
今回は走る絵を魅力的にするためにデジタルツールは極力なしにし
美鈴さんの絵が美鈴さんの絵として動いているように見せたいと思いました。

(後から動かすと、動かした人の影を感じてしまって内容に集中できないと思ったのです)
ただ何はともあれ、そうなると大変なのは作画です。

基本的に作画を僕がやりつつ、それを郵送し美鈴さんがそれを清書してもらうことで現在の動きのタッチになっていきました。
このやり方を発見して、ようやく人様に見せられるようになってきた感じでした。

右が僕の絵、左が美鈴さんの清書。

ちなみに、この時に美鈴さんは「よしいさんの絵のままで良いのでは?」と言ってはくれたのですが、
構図やポーズが一緒でも僕の絵と美鈴さんの絵では「タッチ」がまるで違うので、納得出来ずに書き直しをお願いしました。
関節のあり方、服の膨らみ感などなど、全然違うのです。

そんなこんなで、僕が下絵を描いて美鈴さんが仕上げるという二度手間っぽい感じで作業が進行し
さらに僕と美鈴さんの生活時間帯が全く違うのとか編集作業のせいで段々と下絵を描くのが間に合わず、
イメージだけ伝えて描いてもらったカットも沢山ありまして、そういうカットが実はホントに凄い!
ちなみに冒頭の扉は、とある2本の名作映画が元ネタになってます。もしよかったら元ネタ探ししてみてください。

それから、監視室や、地下道、街並み、夜景、わずか数秒しか映らないのが勿体ないけど全てが素晴らしいし美しいです。

ホントに贅沢なミュージックビデオです。結構展開の関係で使われてない絵も有るので、
そういったカットされたシーン含めたら描いた量で言ったら美鈴さんの仕事の中ではダントツじゃないでしょうか、今回のビデオ制作。
ホントに頭が下がります。

 

そして、描いてもらったのはいいのですが、今度は切り抜きも地味に大変でした。
たとえば下のカットを見てください。

何の変哲もない絵ですが実は所々線が閉じていないんです。線が閉じてないため、フォトショのワンクリックの自動選択の技を使えないのは勿論、
髪型とかはどこまで切抜きすべきかで、シルエットの印象がかなり印象が変わってしまうのです。
その切り抜きが何十枚と送られてくるのですが、〆切が差し迫っていた為、切り抜きを全て僕がやる時間もなくて
同棲中の彼女に頼んで助けてもらいました。
迷惑かけちゃったのですが結果的に線を閉じなかったことで美鈴さんらしい柔らかさを残せた気がします。

それから、結構今回の映像で面白かったエピソードが二つあるのですが、

ひとつは、3回目あたりのオフラインが出来て煮詰まっていた時期に三鼓さんに見てもらったら「中だるみしててもうひと展開欲しい」と仰っていたタイミングで、
英語のテロップを入れたいという話が涼平さんからあって、展開に悩みながらテロップ作業をしていたら、
英語の歌詞が入るのに更に英語の字幕ってダサい!と壁にぶち当たってしまい、
そこで三鼓さんの言葉が頭の中を過ぎって、じゃあ文字を壁や床に見立ててみよう!といまの演出が入りました。
(元々は階段の迷宮のシーンがもっと続いてました)

それから、もうひとつのエピソードは中盤に出てくる女の子が急に具合が悪くなって寝込んでいるシーン。

実はこれ、ギリギリになって美鈴さんに描いてもらったんですが、この部分は僕の体験談+心象風景なのです。制作の架橋に差し掛かった頃に、彼女がホームシックというかストレスで急性胃腸炎で入院しちゃって、その時の体験を反映してます。

ちなみに、その時のこんな感じの絵をください!って思いつきで送った写メです。

 

 

この時〆切の数日前。。。

 

なので、このシーンを見てマリッジブルーとかホームシックで悩んでる人が居たら共感して貰えるはず?

 

ちなみに、こちらが完成版。すごい!

一応、そんなわけで僕の今回描いたミュージックビデオでは、

田舎から上京して心の病に陥って出戻りして自分の役割を果たそうとする…というストーリーになってるのですが、

粉々に砕ける所は涼平さんの話では死んだと言う事らしいです。

 

一応、更にその裏のストーリーとしては、

ミギミミに限らず世界中のアーティストはみんな音楽でみんなを普段のしがらみから解放させようと頑張るけど、

どんな盛り上がったライブの後ですらみんなひっそりと社会へ戻っていく、そのやるせなさというか悲壮感に関するお話にもなってます。

これが絵コンテ会議で僕の提案した解釈。

こういうネタばらしすると全然そんなの伝わらなかったよ~!という方もいると思います。
うん、そりゃそうですよね、月に囚われたウサギの女の子が地球に来たら空気が合わずに死んじゃったって話ですものね。

でも、それでも最後の男の子のやるせなさの気持ちのほんの少しでも伝えられたらなぁ…なんて思ってます。

 

長くなっちゃいましたけど、見所はとにかく大山美鈴画伯の絵ですから、ストーリーの解釈は皆様にお任せします。 

 

ミュージックビデオの制作の依頼なんて二度とないだろうと思っていたのに、
機会をくれたMigimimi sleep tightのみなさんと大山美鈴さん
最後まで自由にやらせてくださりありがとうございました。
オフラインを見て適切なアドバイスを下さった三皷梨菜さんもありがとうございました
ご覧下さった方でこちらにたどり着いたからもありがとうございます。

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