American sniper

クリントイーストウッド監督最新作「アメリカンスナイパー」を見た

この映画はイーストウッド監督の最大のヒット作となったということで

大変話題となっています。


ベースはクリス・カイル氏の自伝で、

それをプロデューサー兼主演のブラッドリー・クーパーが映画化権をとって

早撮り低予算で有名なイーストウッドにたどり着いたとか。


まず、この映画かなり衝撃的なのはすごく不穏なドンドンドンという音がなっているところから始まり

それが、BGMじゃなく、戦車のキャタピラの音だというのに驚きます。

いきなり戦場。

そして、その戦場の端にいるスナイパーは少年が対戦車手榴弾を持っているのを見つけてしまう。

上官に報告すると、こちらからは見えないので判断は委ねる、と言われる。

少年を殺すべきか否か。

すると時代はさかのぼり、彼の少年時代から何故戦場に来たのか

ようやく説明が始まる。

彼は二人兄弟の兄としてたくましく育ち、南部のカウボーイとして生きていた。

しかし、911の報道をテレビで見るなりすぐさま軍隊へ応募する。

そこで彼は、普通の海兵隊ではなくシールズと呼ばれるエリート集団へ入隊する。

そこでの訓練は凄まじく次々と脱落していくが、

決して若くはなかったが訓練に耐えてしがみつく、

同時にスナイパーとしての才能を開花させてゆく。

で、ある日バーで美しい女性と出会って恋に落ち、結婚する。

そして、ついにイラクへの派遣の日がやってきた。

初のイラクでのミッション。

彼に命ぜられたのは、タリバン制圧のためにしらみつぶしに突入する海兵隊を守るため、

見渡せる場所から敵をいち早く見つけ出して、射殺すること。

そして、ようやく冒頭の少年を撃つか撃たないかのシーン。


実は、ここが肝です。

何故、この主人公のスナイパーがものすごくアメリカで英雄視されているかというと、

実は自分やアメリカのために史上最多の敵を倒したからではなく、

危険な戦場で多くの兵士を守った(救った)からなんですね。

なので、この後のシーンで「あなたに救って頂いたものです」

と傷痍軍人が彼にお礼をするシーンがあるのですがその時に

一体どの時のことだかわからないのでピンとこないというくらい

ものすごいたくさんの兵士を救ったようです。


でも、この映画が一筋縄ではいかないのは

その、史上最強のスナイパーが実はPTSD(心的外傷後ストレス障害)に蝕まれて

おかしくなってゆく姿が描かれます。

この映画では、4回のイラクへの派遣とその間のアメリカでの生活が

割と丁寧に順を追って描かれます。

そこで、次第に彼が戦場で伝説化して行きながら、

次第に彼もまた戦争の犠牲者であることが暗喩されます。

アメリカに帰ってきてイラクの報道があるとテレビにかじりついているが

周りの奴らはすでに911の事なんかどうでもよくなってしまっている。

異常なのは自分だというが、むしろ一般人の方では?と彼の立場から描いたりすることで

孤独感がより際立ってゆく。


中でも秀逸だったシーンは、

彼がいつものようにリビングでテレビを見ているシーン。

カメラは銃声の鳴り響くテレビ側から撮っていて、彼に近い付いて行き、

そのまま彼を回り込んでぐるりとテレビを写します

が、なんとそこには何も映っていないんです。

そう、彼はテレビに反射する自分自身と対峙している。


この映画は結構こうゆう鏡合わせの物がよく出てくる。

まず、この映画の最大の敵は実はスナイパーなんですね。

敵側に金で雇われたスナイパーがいて、彼は射撃のメダリストであり

家庭人であることが示され、敵側にも実は同じ行動があることを一瞬のシーンですが

きちんと見せてきます。


まぁ、語り出すと本当にきりがないです。


でも、本当に一番グッときてしまったのは主人公が戦場であったことを

家庭ではどうしても妻に告白できなかったこと。

ヒーローとして崇められ、国のために戦ったけど、

実際にやったことといえば、女や子供を殺し、協力者を助けられなかった、

しかも、彼は敵の死角から警告もなく次々と人を殺していったせいで、

より個人的に罪を背負っていったように見えた。


監督は主人公であるカイル氏のその後の顛末について

「彼は運命に捕まったのだ」と話したそうだ。

つまり、そうなって当然だということをいっている。


死神のような男が迎えに来ると、

笑顔で家から出て行き、車に乗り込み

送り出した妻は、ドアの隙間からじっと覗いている。

そして、字幕でその死神のような不吉な顔をした元兵士によって

史上最強のスナイパーが殺された顛末が出てきて

その後、当時の報道映像を編集して

彼の葬儀が凄まじい規模であったことがわかるようになってる。

しかし、そんだけ悲劇のヒーロー的に仕上げたかと思うと、

おろどくのはエンドロール。


なんと、エンドロールが無音。

完全なる無音。

もう、そこにすべてが集約されてる気がするなぁ。

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