Grand Budapest Hotel

「グランド・ブダベスト・ホテル」を見た。

まず言っておきたいのは、僕はウェス・アンダーソンの作品が非常に好きで、彼のような美意識で映像を撮りたいと思っていた時期がある。(もちろん、すぐに諦めたが…)

なので、今回もまたというべきか、なんというべきか、非常に好き。

嫌いになれるわけがない。

 

よく、海外の有名な監督の作家性を強調した

「もし◯◯監督なら」みたいなシリーズの動画があるのだけど、

基本的には「あるある」の程度に収まるんだけど、

このウェス・アンダーソンという監督は、

おどろくべきことに、どこからどこまでもがウェス・アンダーソンの世界なのだ。

カメラワーク、衣装、セット、小道具、役者の表情まで

あらゆるものが制御され、異常とも言える世界観を作り上げている。

そして、また目に見える部分だけではない。

映画という性質上、重要となるストーリーやキャラクターの設定、

リアリティラインの扱い…。

例えば、最も分かりやすいのは、

死の扱いが非常に軽い…人が死んでもギャー!と言わないし、殺す方も淡々としている。そして、独特の間抜けさユーモアと主人公合わせのご都合主義。

また人物の配置も、小津映画のようにシンプル。

自分の文章力の稚拙さも相まって、これらの情報を聞くと、

人によっては多分思い浮かべるのは[よく出来た映画]ではなく、

エド・ウッド的な超チープな絵になる人も多いのではないだろうか?

でも、実際に画面を見たら、ショボイとは言いがたい

信じられないほどに計算され尽くした美しい世界観にあふれている。

 

映像を作る上で、ショボく見えないコツというのがあって、

技術的にあまり攻めず、敢えて古い手法だけで固めることで

「当時から変わらない印象」を演出できる…という基本的な法則がある。

例えば、時代の流行に合わせて作ると古くなるのは早いけど、

既にオールドスタイルとなっている場合、時間を経てみても同じような印象を持ったままになる。(遠近法と一緒で遠くのものになると止まって見えるのだ)

 

つまり、実はウェス・アンダーソンの作品は、

実は、丁寧に作る心がけさえあれば、実はだれでもできることを

何万個も積み重ねる事で自分のスタイルにしているのだ。

例えば、彼の作品ではCGよりもミニチュアやコマ撮りが優先されるが、

その手法自体は万十年も前に創りだされた手法。

また、カメラワークもステディカム、ハンディ以前の昔ながらの

レールを敷いたり、クレーンを使ってのもの。

なのに

なにの!?

なのに!

なのに、なんでこんなに豊かなのか!?

キューブリックはクールすぎる、

小津はモダンすぎる、

強いて言うと、実は一番似ているのは、

それこそ、舞台的でつまらないとされた「月世界旅行」かも知れない。

そう、やはり要素だけ取り出すと、どうしても面白いとはいえないのだ。

 

上の動画は「もしウェス・アンダーソンがスター・ウォーズを監督したら」という動画。

SWシリーズの中でも屈指の名シーンとされる、酒場のシーンだが。

何という緊張感のなさw

 

つまり、こういうことなのだ、彼の作品は今ある映画文法…

感情移入させたり、スリリングさ、リアリティ、

すべてが全て、僕らの知る映画からかけ離れた世界にある映画なのだ。

 

だけど、これが100%オリジナルなのか?

というとまた違っていて、実は何か既視感がある。

映画だけでなく、絵画や絵本、イラスト、コマーシャル、MV…さまざまな視覚メディアを見てきたのだろうなー。

だから、

だからこその、あのアングルの制限で長編づくりが可能なのだろう。

 

この映画で僕が目から鱗のシーンを紹介。

ゼロが恋人の家から帰っていくシーンだ。

まず、ゼロ君が天窓からマリオ的に飛び出して来て、

そのまま左方向へゆきフレームアウトしていく。

その後、またフレームの外でUターンして

先程より奥を影になって横切るという

ワンカットのシーンがあるのだけど(カメラは固定)、

単順に構図としても気持ちがいい、

尚且つ奥行き表現としても優れているし、

キャラクターがシルエットになって、タンタンの画のようになっている、完全にコミカルな身体的演技に見られる気持ちよさ、

そして、Uターンして奥から再び現れるのが「もうそんな奥いたの!?」というくらい一瞬で奥に行っていて、その"間"だけで笑える。

あまりの無駄の無さに驚く。

いや、無駄をそぐなら奥を再び横切るシーンは要らないのかもしれないけどw

 

褒め称えるにはいくら言葉があっても足りないけど、ウェス・アンダーソンの世界観はどこまで言ってもウェス・アンダーソンの世界なのだと思い知らされました。

 

ただ、話としては「ライフ・アクアティック」や「ロイヤル・テネンバウムズ」の方が好きかなー。

「ライフ・アクアティック」は一部の人が嫌がるような、金持ち臭も少ないので普通に面白いと思うです。

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